高校のクラス会に、Aがやって来た。
高校時代のAは、スポーツ万能で女子からモテ、私は羨ましく思っていた。
そのAがクラス会に参加したのは、卒業20年で初めてのこと。
クラスメイト、「元気だったか?」
A、「ああ」
クラスメイト、「クラス会に来ないから、皆、君の噂をしてたんだよ」
A、「どうせ、悪い噂だろ?」
クラスメイト、「そんなことないよ」
とは言うものの、Aに対し良い噂は聞いたことがなかった。
A、「今、〇〇をやってるんだ」
クラスメイト、「社長なの?」
A、「一応」
クラスメイト、「凄いね」
社長をしているAの身なりは、オシャレに疎い私でも知っている高級ブランドの時計などのアクセサリーを付け、シャツの襟は立てていた。
私、「会社は儲かっているみたいだね」
A、「今年になって、ようやく儲かりだした」
私、「何処に住んでるの?」
A、「〇〇のタワマン」
クラスメイト、「〇〇のタワマンって、買うと高いんだろ?」
A、「賃貸だから、家賃は100万もしないよ」
クラスメイト、「100万って何だよ。俺なんて3人家族で7万円のボロ家に住んでるんだぞ」
私達のことを離れたところから見ていたのは、金融関係の仕事に就いているクラスメイトのB子。
B子が私に手招きしたため
私、「どうかした?」
B子、「A君には関わらないほうが良いと思うわよ」
私、「どうして?女の勘?」
B子、「ううん、金融の仕事に就いている者の勘」
私、「A君の何かオカシイの?」
B子、「A君の身に付けているモノは、おそらくコピー(偽物)よ」
私、「どうして、そう思うの?」
B子、「本物なら300万円以上はするのよ、あの時計。300万円以上する時計を身に付ける人が、あんな汚い手はしてないわよ」
A君のところに戻ると、A君の手は肌が荒れており、爪先は油か何かで汚れていた。
クラス会の数日後、金融関係の仕事に就いているB子から連絡があったのは、B子がA君のことを調べると数千万円の借金があることが判明したから。
B子、「貴方、大丈夫だった?」
私、「大丈夫って、何のこと?」
B子、「A君にお金は貸してない?」
私、「住宅ローンが残ってるのに、他人にお金を貸す余裕なんてないよ」
B子、「なら良いけど、〇〇先生(担任の先生)、A君にお金を貸したらしいわよ」
私、「幾ら?」
B子、「300万」
私、「せ、先生から300万も借りたの?」
B子、「お金を借りる担保に、例の時計(高級時計の偽物)を先生に預けたらしいわよ」